最先端・次世代研究開発支援プログラム研究テーマ

ナノ液体膜の微細パターニングによる機能性薄膜潤滑システムの創成

研究の背景

2025年国内総発電量の20%
(参考)内閣府ホームページ

 インターネットの普及により,「いつでも・どこでも・だれでも」情報を自由自在に使用できるようになってきました.このような高度情報社会を支えるには,コンピュータや,サーバー,デジタル家電のみならず,ネットワーク内にも膨大な情報を蓄積しておくことが必要です.磁気ディスク装置(hard disk drive: HDD)は,大容量かつ安価な情報記憶装置として現在も今後も中核的役割を果たします.一方,デジタル放送の開始や3D映画・ゲームの普及に伴い,デジタル情報が急増しており,情報機器による消費電力は2025年には,国内総発電量の20%に達する可能性があります.そのため,高度情報社会の持続的発展には,省エネルギー型の次世代HDDが必須です(上図).
 HDDは,高速回転する記録媒体である磁気ディスクと,このディスク上に浮上しながら記録再生を行う磁気ヘッドから構成されています.ディスクを高速回転させるために,一定の電力が消費されます.そのため,記録密度(単位面積あたりの記録容量)を向上できれば,一枚のディスクの記録容量が増大し,記録容量あたりの消費電力が削減されます.
 記録密度を向上するために,ヘッドとディスク間のすきまを微小化することが必須です.例えば,すきまを現状の4ナノメートル(4 nm)から1 nmまで低減すれば,記録密度は約30倍,消費電力は約1/30になります((下図)).すきま1 nmがディスク表面を保護する液体潤滑膜の厚さと同程度となるため,次世代HDDでは,現状の空気膜による浮上記録方式からナノ液体潤滑膜を介した接触記録方式へ転換する技術的パラダイムシフトが要請されます.ヘッドディスク間の固体接触を回避させ,1 nmのすきまを介した100 km/hの相対運動を精確かつ安定に実現しなければなりませんので,ナノ厚さの単分子層液体膜を介した潤滑技術が次世代HDD実現の鍵を握っていると言えます.しかし,この潤滑技術はまだ確立されていません.

次世代HDD実現の鍵:潤滑技術のパラダイムシフト

説明図

研究の目標

 ディスク表面に塗布されているナノメートル厚さの液体潤滑膜に,透明・不透明部分を配置したマスクを介して紫外線を選択的に照射し,液体潤滑分子の運動・構造を100 nmオーダの照射・非照射領域ごとに巧妙に制御することにより,所望の機能・性能を有する潤滑表面を創成し,省エネ型次世代HDDの実現を目指します.

研究の特色

紫外線境界部の分子流動を利用して作成した文字

 選択的紫外線照射により,液体潤滑膜を異なる機能を持つ微細領域(機能的パターン)に分割し,材料に固有の特性を凌駕する新しい特性の創成を可能とします.さらに,世界で初めて発見した紫外線照射により液体潤滑膜に凹凸パターン(右図)が形成される現象を応用して,潤滑特性の画期的改善を図る本研究は,斬新的で独創性に富んだものです.

将来的に期待される効果や応用分野

 革新的潤滑技術の確立により,省エネ型次世代HDDの実用化を促進し,情報社会の継続的発展に大きな寄与が期待できます.また,世界HDD市場における日本のシェアを拡大できれば,巨大な経済効果が見込まれます.さらに,自動車関連の極限潤滑やマイクロマシンなど,薄膜潤滑の応用分野における技術発展への寄与も期待できます.