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有限アスペクト比のテイラー渦流れにおける
モード形成とモード遷移

Transient process of multiple mode in Taylor vortex flow with finite aspect ratio

◯准 古川 裕之 (名大院)   正 渡辺 崇 (名大)
 正 中村 育雄 (名大院)    

$\textstyle \parbox{120mm}{
Hiroyuki FURUKAWA, Nagoya University, Furo-cho, Chik...
...oya\\
Takashi WATANABE, Nagoya University\\
Ikuo NAKAMURA, Nagoya University}$


$\textstyle \parbox{180mm}{
Taylor vortex flows between two concentric rotating ...
...Decelerating Flow, Accelerating Flow, Mode Exchange, Bifurcation}
\end{center}}$

]

1.  ま え が き

 両端に固定端面を持ち,内円筒が回転する有限長さ の同心2重円筒内に発達するテイラー渦流れについて は,多くの研究が行われている[1]. 本研究では, テイラー渦の非一意性についての東ら[],中村ら[]の研究を踏まえ, 内円筒速度を減少させた場合に生ずるテイラー渦流れのモード変化と, 静止流体から内円筒速度を増速させる割合を変化させた場合のモード形成過程に ついて数値的に明らかにすることを目的とする.

2.  計 算 条 件

 内外円筒すきまを代表長 さ,内円筒周速度を代表速度として物理量を無次元化する. 支配基礎方程式は,軸対称非 定常非圧縮のNavier-Stokes方程式,および連続の式で ある. 円筒高さの内外円筒すきまに対する比をアスペクト比 ${\sl\Gamma}$とする. 支配方程式の離散化はMAC法に基づき,格子 分割はスタガード格子である. 壁面における境界条件として,速度にはすべりなし条件を,圧力には 運動方程式に基づくノイマン形条件を与える.初期条件として,全ての領域にわ たり速度成分の値に0を規定する.増速率の違いによるモード形成過程を調べる 場合は,それぞれの増速時間で,レイノルズ数を0からその条件の値まで線形に増加さ せる. それ以外の場合には,計算開始とともにレイノルズ数を0からその条件の値まで ステップ的に上げる.なお,物理的には内円筒半径20mm,外円筒半径30mmの 場合を想定する.


(a) ${\sl\Gamma} = 2.6, Re=500$
 
Table: Acceleration of inner cylinder and final flow mode
T[s] 0.20 0.40 0.60 0.65 0.70 0.75 0.80 1.00
St 0.3333 0.1667 0.1111 0.1026 0.0952 0.0889 0.0833 0.0667
Mode A3 A3 A3 A3 N2 N2 N2 N2

 
(b) ${\sl\Gamma} = 2.6, Re=550$
T[s] 0.20 0.40 0.60 0.65 0.70 0.75 0.80 1.00
St 0.3030 0.1515 0.1010 0.0932 0.0866 0.0808 0.0758 0.0606
Mode A3 A3 A3 A3 A3 A3 N2 N2

 
(c) ${\sl\Gamma} = 2.6, Re=600$
T[s] 0.20 0.40 0.60 0.65 0.70 0.75 0.80 1.00
St 0.2778 0.1389 0.0926 0.0855 0.0794 0.0741 0.0694 0.0556
Mode A3 A3 A3 A3 A3 A3 N2 N2
 

3.  解析結果および考察

3$\cdot$1  モード間の非定常な推移     ある一定のレイノルズ数で十分に発達した流れにおいても,レイノルズ数が変化する と,異なるモードの流れに移ることがある[]. 本計算では ${\sl\Gamma}=0.1〜1.6$の範囲において,レイノルズ数を次第に減 少させることにより,正規2セルモード,変異1セルモードおよびツインセルモー ドの間でのモード変化を確認した.

 モード変化の例として,アスペクト比0.8,レイノルズ数を無次元時間 t1=3000における1000からt2=6000における600まで直線的に減少させた場 合の,ツインセルモードから 変異1セルモードへの変化を図1に示す. これ以降の図はすべて同様だが,図の左側が回転する内円筒側で,右側が静止し ている外円筒側である. 無次元時間tが3000の時点では,セルの境界の端が上下端面に到達しているツインセルモー ドである. レイノルズ数が減少し始めると,内円筒側で 付加的な小さな渦が現れる端面とは反対の端面上で,ツインセルの境界が次第に外円 筒側に移動し,やがて,端面から外円筒壁面に移ることで変異1セルモードへと変化 して落ち着く.


  
Figure: Development of flow field from twin-cell mode to anomalous one-cell mode ( ${\it \Gamma}$=0.8,  Re=1000→600,  t1=3000,  t2=6000)
\begin{figure}
\epsfile{file=material/twin-1/twin-1-nc-01.eps,scale=0.97}
\end{figure}

3$\cdot$2  内円筒増速率の違いによるモード形成     静止流体からの内円筒速度の増加割合により,形成されるモードが異なる. ${\sl\Gamma}= 2.6$として,最終的なレイノルズ数を500,550,600とした場合 に,内円筒増速割合に対して生成されるモードを表1に示す. 図中,Tは有次元の増速時間であり,無次元増速パラメータStは,最終的な 内円筒角速度 ${\sl\omega}$に対して, $1/T{\sl\omega}$として与える. また,A3は変異3セルモード,N2は正規2セルモードを示す.

 表1(a)のRe = 500では,St=0.1026までは二次モードで ある変異3セルモードが現れる. そして, St=0.1026と0.0952の間でモードが変化し,St=0.0952以降は主モード である正規2セルモードが現れる. 表1(b),(c)のRe = 550, 600の場 合では,モード境界点が St=0.0808と 0.0758, St=0.0741と0.0694の間にあり,高レイノルズ数ほど変異モードが ゆっくりとした増速の場合にも現れる傾向にある.

 同様な計算を, ${\sl\Gamma}= 4.0$として,Re=500,650,700,800,1000 のそれぞれのレイノルズ数でも行っ た.しかし ${\sl\Gamma}= 4.0$の場合は, ${\sl\Gamma}= 2.6$の場合のよう に増速割合と形成されるモードの関係が明確には現れなかった.


  
Figure: Flow development from rest to anomalous six-cell mode $({\it \Gamma}$=5.0, Re=400, tac=4.8, St=0.42)
\begin{figure}
\epsfile{file=material/a6-form/a6-form.eps,scale=0.98}
\end{figure}

 東ら[]は,正規2セル,正規4セル,変異4セルモードの発生機構を 明らかにしているが,本節では,正規6セルモード,変異6セルモード の発生機構について述べる.

  ${\sl\Gamma}=5.0$Re=400で,St=0.42,0.21のそれぞれの場合に 形成される変異6セルモード,正規6セルモードの形成過程を図2,3 に示す. 静止流体からレイノルズ数を線形に増加させる 無次元増速時間tacはそれぞれ4.8, 9.6である.

 図2では,t=12の時点で内円筒と上下端面の 角で小さな渦が発生する.内円筒の増速はこの時点ですでに終了しており, 流れはRe=400で一定である.この角の渦は半径方向に広がり, t=25.2の時点では,これらの渦の軸方向内側に新たな渦が形成される一方で, 軸方向中央断面付近に,2つのセルが発生する. やがて,軸方向全体に渡ってセルが形成され,t=36の時点では 軸方向に10個のセルが形成されている.しかしこの流れは安定せず, 上下端面に接しているセルの勢力が弱くなり,隣り合うセルに押し潰されて, t=72の時点では,変異8セルモードへと移行している.しばらくはこのまま 安定するが,t=492の時点で,軸方向中央断面よりすこし上側にあり,境界で 外側から内側への流れをもつペアのセルが消滅し,隣り合うセルに押し潰される ことにより,流れは変異6セルモードへと移行する.

 図3では,内円筒と上下端面の 角で小さな渦が発生し,やがて軸方向全体に渡って10個のセルが形成され るまでは,図2と同様である. しかし,図2では上下端面で変異セルが発生したのに対し, 図3では上下端面に接するセルの軸方向内側のセルが,その 上下のセルに挟まれるようにして弱まる.この弱まるセルの上下のセル は同じ方向に回転しているので境界を接することができず,弱まるセルの軸方 向内側に隣接するセルが減衰し,流れは正規6セルモード へと移行する.


  
Figure: Flow development from rest to normal six-cell mode $({\it \Gamma}$=5.0, Re=400, tac=9.6, St=0.21)
\begin{figure}
\begin{center}
\epsfile{file=material/n6-form/n6-form.eps,scale=1.0}
\end{center}\end{figure}

4. 結  論

 両端に固定端面を持ち,内円筒が回転する有限長さ の同心2重円筒内に発達するテイラー渦流れを数値的に解析し, 以下の結論を得た.

(1) アスペクト比が1のオーダの場合で,内円筒速度を減少させることにより, モード間での分岐を予測し,その発生機構を明らかにした.

(2)内円筒増速割合,およびレイノルズ数が形成されるモードに及ぼす影響の傾 向を示した.

(3) 増速割合の違いによる,モードの発生機構の差異を示した.

文    献


 
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Hiroyuki Furukawa
1999-12-26