2014年12月10日遠藤 守 准教授(社会システム情報学専攻)2014/4/1着任

2014年4月に着任しました遠藤守です。2003年に本学大学院人間情報学研究科博士後期課程を修了後、11年間中京大学で情報通信技術(ICT)の社会応用に関する研究を行ってきました。ICTの社会応用と一口に言っても様々な切り口と手段がありますので、今回は代表的な2つの取り組みをご紹介します。

1.サイエンスミュージアムにおける天文情報の利活用に関する研究 1990年頃から名古屋市科学館との共同研究でスタートした本取組では、名古屋大学のほか愛知県内の5大学と名古屋市科学館と共同で「雑居ゼミ」と呼ばれる合同ゼミを月に1回開催しています。本ゼミでは中核となる教員とそのゼミ生が名古屋市科学館に集い、主に名古屋市科学館の天文関係の資料を活用した教育教材や展示物、webサイト等の開発及び活用、そして科学展示のあり方について,議論,実践を行っています。2011年にリニューアルされた名古屋市科学館の天文フロアには、常設展示として当ゼミの研究成果が一般の科学館来場者に気軽に楽しんで頂けるようになっています。
ゼミ発足の当初は、コンピュータグラフィックス技術を活用し、流星群や彗星・天体現象などの天文情報をアニメーションで表現することで、わかりやすく提示する活動を展開してきました。近年ではインターネットの発達やスマートデバイス普及の観点から先端の情報技術を活用し、オンライン学習教材の開発や、科学館内のみでなく屋外で実施されるワークショップなどでも活用可能な天文学習教材の開発などを行っています。
開発システムの一例として、モバイルガイドシステムの開発があります。本システムは、月ごとに変化するプラネタリウムのテーマと展示室の関わりを通して、来館者の鑑賞体験を豊かなものにすることを目標としたモバイルガイドです。モバイルガイドのコンテンツとして学芸員自らが展示物の見どころを解説するビデオを用意し、季節や天文現象に応じた知識を展示物と共に伝えることができるようにしています。携帯情報端末を用いることで、来館者は展示物の前で学芸員の見どころを確認しながら鑑賞することができます。近年ではiBeaconのようなビーコン端末と組み合わせ、屋内での来場者の位置情報に基づき適切に情報提供する手法の開発を進めています。

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2.オープンデータ推進を通じた産官学民の連携による社会情報化の研究 2013年頃から、行政の信頼性向上や国民参加・官民協働の推進,経済活性化や行政の効率化の観点から,公共性の高い情報を2次利用が可能な形式で提供することを目的としたオープンデータ・オープンガバメントの推進が叫ばれています。これらの取り組みは情報科学分野におけるフリーソフトウェア運動やオープンソースなどが源泉であり、自治体における将来の人口減少による課題の解決や、自治体の情報化推進に大きな変革をもたらすものになると期待しています。現在は2014年2月から地元長野県須坂市でのオープンデータに関する取り組みをきっかけに、長野県・愛知県・新潟県をフィールドとしたオープンデータ推進に関する研究を進めています。
長野県では初のオープンデータ推進自治体となった須坂市の事例では、市民の提案・自助努力によって、地元NPOや企業、自治体、これに大学を加えた「産官学民」の4者の連携によりオープンデータを推進しています。小規模自治体では名古屋市などの大規模自治体のようにハッカソン・アイデアソンなどを多く開催し、その中から優れた成果を公共サービスとして展開するという手段が取れません。このことから小規模な自治体でもオープンデータの推進を可能にするため、「官」を「産」と「学」で支え、また「学」が「官」と「民」の間に入る「産官学民」の連携手法を提案し、新たな公共サービスを安価で効果的に可能とする事業モデルの構築手法を開発しています。2014年度の研究成果の一例では、携帯電波や電力供給のない地元観光資源の駐車場のモニタリングおよびインターネット配信を、ワークショップやプロトタイピングなどのイベント開催や手法を取り入れ、一連の流れから、新たなサービス創出を行うという事業モデルを構築しました。
これらの取り組みは、将来の自治体運営が行政だけでなく地域住民や企業、学術機関などで一丸となって実施することが重要で、また近年注目される大学組織の地域貢献など様々な研究的要素が詰まっていることから、今後も精力的に進めてゆく予定です。

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