2016年05月13日片桐 孝洋 教授(情報システム学専攻)2016/4/1着任

京都大学工学部情報工学科で学部時代を過ごし、東京大学理学部コンピュータ科学専攻にて学位取得後、電気通信大学で助手、東京大学情報基盤センターで准教授の後、2016年4月より名古屋大学情報基盤センターの教授に着任しました。

私は、学部時代より大学計算機センターのスーパーコンピュータを利用し、東京大学でも教員として情報基盤センターのスーパーコンピュータの運用と研究に関わってきたため、スーパーコンピュータについて20年以上の利用経験があります。名古屋大学でも情報基盤センターに所属してスーパーコンピュータの運営と研究に関わりつつ、大学院情報科学研究科の学生の皆様の教育研究に関われることになり、大変うれしく思っております。

私の研究は一言で言うと、「最先端の計算機で高性能に計算できる枠組み」を研究することです。もし、現在の計算機の計算速度が1000倍高速であれば、現在の固定観念を覆す、まったく予想もできないことができることに疑う余地はないでしょう。また、1000倍高速なハードウェアを持っていても、10倍しか高速化しないソフトウェアを持っていてはだめなことも、同時に予想できるでしょう。つまり、ハードとソフトの両面で、超高性能となる仕組みを研究しないといけません。

科学技術計算で行われる数値シミュレーションを高性能に実行する際には、計算機アーキテクチャと数値計算アルゴリズムの双方について高度な専門知識を必要とします。そのため多くの分野で、高度な知識を持った「職人」が高性能化をしています。また、高性能化の仕組みも不明確であることが多く、工学的な枠組みが適用されていないことさえあります。高性能化のための「職人芸」から「エンジニアリング」への転換が必要です。

これらの背景から近年、多様な計算機環境でも高性能を実現する自動性能チューニング(Automatic Performance Tuning、以降AT)の技術開発に期待が寄せられています。近年の私の研究では、任意のコードにAT機能を自動付加する専用言語ppOpen-ATの開発とそのAT方式の評価を運用中の最先端のスーパーコンピュータを用いて行っております。

一方で、有限差分法や個別要素法を用いた数値計算シミュレーション、演算精度を保証する精度保証、近年需要が急増しているビッグデータ処理(たとえばデータ同化や機械学習)においても、高性能化が求められています。これらの振興分野の課題に対し、高性能計算の専門家の立場で研究を進めています。

開発した最新の高性能計算方式をスーパーコンピュータに適用し、広く利用者に提供するフレームワークやツールの研究開発も、計算科学分野やビッグデータ分野の研究者の支援の観点から重要な研究だと思っています。これらの研究活動を通じ、計算科学分野やデータサイエンス分野で必要となる計算機システムの開発に資する知見を集積し、双方の分野を考慮した、使いやすく高性能な計算機システムのコ・デザインを推進していきます。

以上の研究は振興分野のものであり、研究推進は簡単なことではないでしょう。しかし、チャレンジングで、かつ、実用的な分野であるといえます。このような分野を共に開拓することに興味のある学生の皆様の参加を期待しております。

  • 図:自動チューニング専用言語ppOpen-ATの適用フレームワーク

    図:自動チューニング専用言語ppOpen-ATの適用フレームワーク

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