2013年11月22日社会システム情報学専攻・知識社会システム論講座
間瀬研究室

 当研究室は、コミュニケーション支援研究室(Computer Mediated Communication Lab.)と自称して、人間同士や人間対モノのコミュニケーションをコンピュータを使って支援する技術を研究しています。

【コミュニケーション支援とは】

 共同でモノを創造したり生産する際に、我々はコミュニケーションを必要とします。社会活動においても、コミュニケーションは欠くことがで きません。しかし、コミュニケーションにおいて自分の意図を的確に伝えたり、相手を十分に理解することは容易ではありません。何が問題なのでしょうか?それは、双方の考え方や言葉の基盤がそろっていないので、お互いに、相手が表現したメッセージを正しく理解することが困難となるからです。また、自分の考えや感情を正しく表現できないことや、聞いたことを整理したり覚えておくことが困難だという問題もあります。そこで、コンピュータの計算メディア(computational media)の特性である、記録性、再現性、検索性、分析性などを利用して、人間のコミュニケーション能力を補助、強化することが考えられます。このようなコミュニケーション支援技術は人間同士だけでなく、モノを使うときにも、モノと人とのインタフェースとして必要になります。例えば、知能ロボットとのコミュニケーションについても考える必要があります。

【間瀬研究室では】

当研究室では、コミュニケーションを支援するための諸技術について、画像処理やマルチモーダルインタフェースなどの要素技術から、ロボット、ユビキタ ス・システム化技術まで、広く研究しています。さらに、人間をシステムの一部 としたインタラクションのモデル化とその評価手法を研究して います。また、情報連携基盤センターという実サービスをキャンパスに提供している研究部門として、情報ポータルや教育学習環境システムの研究開発も行っています。とくに、コミュニケーションの内容や場である、体験や行動の計算メディアによる表現法に興味があります。例えば、自分の体験や行動を「記録・記憶」し、「要約」して、相手に「表現」して伝え、相互に「理解」するというインタラク ションの過程を分析して、それぞれのステップで計算メディアによる支援を検討します。これらのステップにコンピュータを介在させて、コミュニケーションをより効率的に、またより効果的なものへと向上させることをねらっています。
 具体的には、次の3つのアプローチから様々なテーマの研究をすすめています。

【状況処理技術】

状況理解(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を目指して、我々は人物検出・同定、移動体追跡、行動認識、画像分類、映像要約、機械学習等の様々な分野において研究を進めています。例えば、次の研究課題を取上げています。

  1. 歩行者検出:状況の自動認識および潜在的危険の自動抽出による安全運転支援を目指して、車載カメラ映像から歩行者を迅速に検出する技術を開発しています。
  2. 人物同定:異なる場所に設置した監視カメラの映像から、同じ人物を見つけ出す方法を研究しています。
  3. イベント識別と映像要約:イベント識別技術を開発しています。開発した技術を保育園の監視映像に適用して、子どもの園生活を反映する映像ダイジェストを自動生成する研究をしています。
  4. 写真自動整理:多彩かつ特徴的な訓練サンプルを自動選択することによって、写真データの分類を効率化する方法を研究しています。
  5. 学習の効率化:あるドメインで学習した識別器を異種ドメインに適応させる移転学習という技術を研究しています。この技術により、学習サンプルの不足や学習サンプル収集の高コストの問題を解決可能です。

【マルチモーダル・インタラクション技術】

コミュニケーションを支援するために、非言語情報に着目しています。人は言語で表現することが難しい心的な状態や、自身でも気づいていない潜在的な状態を非言語情報によって外環境に表し、一方で他者からはそれを読み取ります。情報システムも非言語情報を扱うことで、効果的な支援を行える可能性があります。しかしながら、人の内部状態と非言語的な振る舞いとの関係はとても複雑です。それを解きほぐす鍵が、コミュニケーションの文脈や外環境の状況であると考え、これらの三角関係を体系化することに私達は取り組んでいます。現在は、主に人の集中状態や興味といった心的状態に関して、視行動と外環境における視覚的な変化との間の時空間構造を分析し、得られた知見を応用して、コミュニケーション支援のためのヒューマンコンピュータインタラクションをデザインしています。

  1. スポーツなどの多視点映像の視聴行動の分析〜モノ・コトの新しい見方〜
  2. 視聴者の興味を推定し、シーン推薦を行う多視点映像視聴インタフェースの開発
  3. 運転者の視行動と周辺車の状況変化との時空間構造分析に基づく注意散漫状態の検出
  4. 熟練者の見方のコツを抽出する計算モデルとそれを伝達するインタラクションモデルの設計

【
ユビキタスシステム技術】

日常生活中のあらゆる物やあらゆる場所に情報処理能力を持たせ、人間の生活を豊かにする技術がユビキタスシステム技術です。個人が持ち歩くスマートフォンなどの高性能端末、衣類やカバンに組み込まれた極小センサ、ご家庭や街といった環境中に遍在させた各種センサやデバイス、さらには匿名化された個々人の行動ログの統合解析などを活用して、個々人や特定のグループまたは街や特定の場所の状態や状況を解析したり将来の状況を予測したりして、行動をサポートしたり危険を予防したりできます。長期的にデータを蓄積することで、人や街のライフログとしての活用も期待されています。この他に、小型ウェアラブルセンサを使った人体動作解析やスキル分析、その応用としてのスキル指導・伝承支援なども研究しています。

  1. 衣類型呼吸センサを用いた肺疾患の早期発見
  2. ベッドシーツ型体圧センサを用いた褥瘡予防
  3. 足圧布センサを用いた歩行解析と転倒防止
  4. ウェアラブルセンサを用いたスキル分析・指導支援 (ヤスリがけ、 etc)
  5. スマートフォンを用いたコンテキスト解析やライフログ解析

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