2008年10月30日情報システム学専攻・情報システム論講座
宮尾・八槇研究室(宮尾克教授、八槇博史准教授、山口由紀子助教)

● 研究室の概要

 人に優しいユビキタス社会の構築をめざして、ケータイ情報ネットワークの人間工学的評価や、モバイル・ユビキタス環境におけるセキュリティに関する考察、人工知能技術のコンピュータネットワークへの応用、エージェント技術を用いた大規模社会シミュレーションに関する研究など、多様な研究開発を推進しています。当研究室は協力講座であり、教員の所属は情報連携基盤センター情報基盤ネットワーク研究部門となっています。名古屋大学全学の情報ネットワーク基盤を企画・運営するという部門の特性もあり、情報システムの運用や実社会での応用を強く意識した研究が行われています。
研究室では、宮尾教授が主に博士後期課程の教育・研究指導を、八槇准教授と山口助教が博士前期課程及び学部の教育・研究指導を担当しています。現在の所属学生は教員の入れ替わり等の関係で若干少なめであり、M2が1人、M1が4人、B4が3人の構成となっています。

● 多彩な研究テーマ

 本研究室で実施している研究としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. トラスト形成支援(八槇)

     インターネットやユビキタスコンピューティングのような、サービスの提供者と利用者が互いに見知らぬオープンな環境では、どのようにして相手の信頼性を評価するかという問題が常に発生します。現在は人間が自分で判断するよりないのが実態ですが、知的なソフトウェアエージェントを介することによって、利用者の負荷を大幅に軽減しようという研究です。

  2. ウェブサービスのメタデータによる統合支援(宮尾・八槇)

     ウェブは人間が読む文書の大規模共有を可能としたのみならず、近年ではさらに進んで、情報システムの統合のためのウェブサービスの枠組みへと進化をとげつつあります。これらのウェブサービスは組み合わされてこそ真価を発揮しますが、統合のためにはまだ多くの人手を要します。情報システムやそのコンテンツの意味(セマンティクス)を扱うメタデータ技術の開発・応用によって、統合のためのコストの低減を狙います。京都大学とNICTにより開発された言語グリッドを題材に技術開発を行います。京都大学情報学研究科・石田研究室と連携し、多言語防災情報翻訳システムをはじめとする、防災情報に関する言語資源の統合に取り組んでいます。また、多言語関係のシステム開発として、多言語津波情報リアルタイム自動翻訳システム、多言語生活情報翻訳、愛知県の宿泊・観光施設に対する案内表示多言語化支援、などの開発・更新を行っています。

  3. 政治・経済・社会シミュレーションモデルの再利用性向上(八槇)

     近年、コンピュータの計算能力の大幅向上や、電子化された大規模なデータの出現に伴って、グローバルな政治・経済・社会に関するシミュレーション研究が注目されるようになってきました。一方で、それらの分野の知見を、シミュレーションモデルの蓄積という形で支援していくことが課題になってきています。我々はここでも、メタデータ技術の応用を通じて、これらの研究活動の支援を可能とすべく、実現方式から応用に至る一連の研究活動を展開しています。

  4. モバイル機器・立体映像・車載機器・高齢ドライバへの支援など人間工学的研究(宮尾)

     ケータイやヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)などウエアラブル・コンピューティングともいうべきデバイスのユーザビリティを研究しています。とくに立体映像の見え方の研究では、世界ではじめて、HMDの立体表示に対する水晶体調節を測定して、見やすい映像のあり方を検討しています。自動車製造企業と協力して、車載機器のユーザビリティ向上、高齢ドライバの安全・快適な運転支援に関する研究を10年以上続けています。この他、疫学・公衆衛生学・学校保健などの統計解析を共同研究で、推進しています。

  5. ネットワーク運用技術・情報基盤システムに関する研究(山口・八槇)

     ネットワークセキュリティを向上させるため、ファイアウォール、侵入検知システム、電子メールのウィルスチェック機構を運用してきました。全学のネットワーク機器についてVLAN設定を行い、既存インフラの多様な利用が実現できる環境作りを行い、VPNルータと集合NATルータを利用した新たなプライベートネットワークの構築・利用形態について検討を進めました。この他、名古屋大学CIAIRが収集した実走行車内の対話コーパスを利用して、発話意図推定、対話制御、発話生成に関する音声対話システムの研究を進めています。

● 学生の研究活動

 メンバーの入れ替わりに伴って研究も立ち上げ期にありますが、少なめな人数のわりに多くの研究テーマを互いに有機的に連携しながらすすめています。
19年度のB4(現M1)の卒業研究の成果が論文になりつつあり、FIT2008や国際ワークショップACAN2008などでの成果報告を行っています。また、本年度から本格的に開始した言語グリッド関連の研究についても、論文投稿を積極的に行っています。○

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