2006年08月10日メディア科学専攻
末永研究室

研究室の概要

 末永研究室では、高次元画像処理、コンピュータビジョン、バーチャルリアリティといったメディア処理技術の開発とそれを応用したシステムの研究に取り組んでいます。特に、コンピュータ支援画像診断、コンピュータ支援外科といった医用画像処理技術、人物像解析によるマルチモーダルユーザインタフェースなどの開発を行っています。文部科学省21世紀COEプログラム「社会情報基盤のための音声・映像の知的統合」研究教育拠点、文部科学省科学研究費補助金特定領域「多次元医用画像の知的診断支援」などの大型プロジェクト等において、積極的な研究開発を行っています。また、最近では文部科学省科学技術振興調整費(先端融合領域イノベーション創出拠点の形成)「分析・診断医工学による予防早期医療の創成」プロジェクトもスタートする予定で、ますます研究室での研究活動が活発になりそうです。それでは、末永研究室での研究の例を2つほど簡単に紹介しましょう。

NavI-CAD

 先に述べた文部科学省科学研究費補助金特定領域「多次元医用画像の知的診断支援」においては、「知的CADとしてのナビゲーション診断システムの開発」と題して、多次元医用画像(3次元CT像やMRI像などです)を基にして人体内部を自由に探索しながら診断を行う「ナビゲーション診断」と多次元医用画像から異常と思われる部位を自動的に検出するコンピュータ支援画像診断支援システムを組み合わせた「ナビゲーション型知的医用画像診断支援システム」の研究を行っています。医学の分野において、CT装置といったイメージング装置の発展は非常に目覚しく、マルチスライスCTという最新装置を用いればわずか数十秒の間に全身のCT像が撮影可能となっています。ここで撮影される画像は、一患者あたり500-2000枚程度のスライス像(人体を輪切りにしたCT像です)からなり、これらの画像を読む(「読影する」といいます)医師を支援するためのコンピュータシステムの開発が急務となっています。そこで、末永研究室では、このような画像を効率的に読影するシステムとして、先ほどの「ナビゲーション型知的医用画像診断支援システム(NavI-CAD:Navigation-based Intelligent Computer Aided Diagnosis system for medical images)」の開発を行っています。このシステムでは、仮想化内視鏡システムを用いて人体内部の探索を行う環境を提供し、かつ、異常と疑われる部位があればそれを医師に対して自動的に提示するシステムが開発されています。例えば、図1では、自動的に、あるいは、手動で示した異常領域まで、気管支内部をどのように経れば、その部位までたどりつくかを示している図です。図2は大腸を仮想的に展開した仮想展開像と仮想化内視鏡像などを組み合わせて、効果的に大腸内部に発生するポリープとCT像を用いて簡単に診断できるようにしたシステムです。

気管支内視鏡ナビゲーションシステム

 医学の分野では、体内を直接的に見る方法として内視鏡が使われます。たとえば、大腸内部を観察するときには下部消化管内視鏡(大腸鏡)、胃内部を観察するときには上部消化管内視鏡(通称胃カメラ)、気管支には呼吸器内視鏡(気管支鏡)が使われます。しかしながら、内視鏡で撮影される視野は非常に狭く、気管支のように数多くの分岐からなる臓器内部を観察する場合には、目的地まで到達するのに非常に時間がかかってしまうことがあります。そこで、カーナビゲーションシステムがドライバーを目的地まで誘導するように、内視鏡検査をする医師を目的地まで的確に誘導する内視鏡ナビゲーションシステムの開発を行っています。図3はその画面の例です。このシステムではあらかじめ内視鏡検査をされる患者さんのCT像を撮影し、その画像上、あるいは、それから作成される仮想化内視鏡画像上において目的地(通常は病変がある部分です)を入力します。実際の内視鏡検査時には、実際の内視鏡の先端位置に応じて必要な情報を提示することで、医師を目的地へとナビゲーションするものです。図3では左上に実際の内視鏡画像、右下にはその地点においてCT像から生成された仮想化内視鏡像、右上はCT像から生成した気管支外観像に現在位置を重畳表示したもので、右下はCT像に現在位置をカーソルで示しています。もちろん仮想化内視鏡では実際の内視鏡では観察できない壁面下の情報を提示することが可能です(図4)。このようなシステムを用いることによって、医師は安全・安心・確実に内視鏡検査を実施することができるわけです。

森 健策(メディア科学専攻)

末永研究室の研究内容いかがでしたでしょうか?研究内容についてさらに興味のある方は是非とも以下のWebページをご訪問ください。http://www.newves.org/

スタッフ構成

教 授:末永 康仁
助教授:森 健策
助 手:北坂 孝幸

  • 図1:異常部位への気管支経由のルート生成例。
  • 図2:大腸NavI-CADシステムの例。
    (上)仮想展開像
    (中)CPR像
    (左下)仮想化内視鏡像
    (中下)外形像
    (右下)MRP像
  • 図3:気管支鏡ナビゲーションシステムの例。
    (左上)気管支鏡像
    (左下)対応する仮想化内視鏡像
    (右上)気管支外形像
    (右下)CTスライス像
  • 図4:気管支壁面下の大血管の可視化例。

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