2013年04月25日小島 芳治 ポスドク(計算機数理科学専攻)
組織的な若手研究者等海外派遣プログラム

 本研究科の組織的な若手研究者等海外派遣プログラムにより、2012年9月24日から11月28日までフランスのパリに、2012年12月12日から2013年2月15日までオーストリアのインスブルックに滞在し、研究活動を行いました。

 パリではIRCAM(Institut de Recherche et Coordination Acoustique/Musique、和名:フランス国立音響音楽研究所)に所属されているFlorent Jacquemard氏と共同で、同研究所にて研究を進めました。IRCAMは近代美術で有名なポンピドゥセンターの関連組織で、同センターのほぼ向かいに位置します。正面には有名な噴水があり、毎日多くの人で賑わっていました。パリ市内は、一部の地域が日本人街になっており、日本料理屋、日本食品店、日本人向けの本屋や漫画喫茶まであるので、日本の物を手に入れられないストレスはほとんど感じません。とあるラーメン屋に行ったときは、店員、客ともに半数以上が日本人で、日本の音楽が流れていたのでパリにいながらも日本の雰囲気を感じました。

 肝心の研究活動についてですが、研究室は日本にいたころとは比べ物にならないほど狭く、パーティション等は全くありませんでした。また部屋は研究グループ単位でしたので、学生(といってもお世話になったグループの学生は博士課程のみでしたが)も研究員も全員同じ部屋で研究していました。日本の大学だと指導教員に相談する際に妙に緊張することがあると思いますが、IRCAMでは教員と常に同じ部屋にいるため気軽にディスカッションが出来ているように思います。Jacquemard氏とはおよそ3年前から共同研究を続けており、日本にいる間もメールでやり取りをしていましたが、同じ空間で研究をすることで積極的に議論を交わすことが出来、日本にいた頃とは比べ物にならないスピードで研究が進んでいきました。私の専門はソフトウェアの検証ですが、IRCAMは音楽の研究所なので、Jacquemard氏以外の方と研究についてディスカッションする機会はほとんどありませんでした。しかし、講演やデモなどで普段触れることのない音楽関係の研究を知ることが出来たので、知識を広げるいいきっかけになりました。

 インスブルックでは、インスブルック大学(Universitat Innsbruck)のAart Middeldorp氏の研究グループのお世話になりました。インスブルックは市街地の標高が約574mで、山に囲まれた寒さの厳しい地域です。気温が1日中氷点下ということもあります。しかし、風があまり強くないのと、防寒対策をしてきたこともあり気温ほどの寒さは感じませんでした。また、見渡す限りの山の景色のおかげで精神的にリラックス出来たような気がしました。

 Middeldorp氏や研究グループのメンバーとは滞在前からある程度の面識があったので、すんなり研究室の雰囲気に馴染むことが出来ました。滞在中は学生部屋の一角を与えて頂きました。こちらは、学生部屋と教員の部屋がはっきり分かれており、日本の大学と同様の雰囲気でした。滞在中は研究グループのセミナーに参加させて頂き、研究発表を聞いたり、また自身の研究を紹介したりしました。日本にいても論文を読むことでインスブルックのグループの研究を知ることは出来るのですが、実際に話を聞くことは理解の大きな助けになりました。

 オーストリアの公用語はドイツ語ですが、研究グループ内のコミュニケーションはほぼ全て英語でした。パリでは周りの会話がフランス語ばかりでしたが、インスブルックでは周りの会話が英語なので、英語能力の向上という点で大きかったです。

 最後に、今回の派遣を支援して下さった方々、及び派遣先でお世話になった方々に心より感謝申し上げます。


  • 写真:研究所隣の噴水

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