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対人距離の分類

対人関係における回避距離については,鵜沼 [5]がモデル化した領域に基づいて考え る.鵜沼 [5]は対人距離の分類として以下のような領域に分類している.

1.
領域A:他人を入れない空間

Hall [6]が分類した密接距離に相当する.この領域には他人を入れない.親し い人間であろうとも侵入してきたら回避行動をとる.この心理的空間には 身体の干渉などの物理的な空間も含める.

2.
領域B:知人とコミュニケーションを行う空間

コミュニケーションを行う人間はこの領域に侵入することができるが,その他の 人間は侵入できない.普段はこの領域に他人を入れない縄張り領域である. Hall [6]のパーソナルスペースに相当する.コミュニケーションをする人間を この領域へ受け入れる.

3.
領域C:知人の判別ができる空間

コミュニケーションをする必要がある人間に対しては接近しようとする心理的な 力が働くが,その他の人間に対しては何ら力は働かない.

ただし,領域A$\subseteq$領域B$\subseteq$領域Cである.

ここで,それぞれの領域の形であるが,実際のパーソナルスペースはたまご型で あり,人間の位置するところはたまごの底あたりである.自分自身の後方はパー ソナルスペースが狭いので,他の人間が存在してもそれほど不快に感じないが,前 方はパーソナルスペースが広いため,同じ距離でも後方では不快に感じなかった 距離が前方では不快に感じることもある.混雑した電車の車内などで入り口付近 の人がドアの方向へ向き,自らのスペースをつくっているというのは良い例であ ろう.したがって,領域A,領域B,領域Cを図示すると図2.1になる.


  
Figure 2.1: 領域別のパーソナルスペース
\includegraphics[width=20zw,height=20zw,keepaspectratio]{zone1.eps}

したがって,本研究ではHall [6]がパーソナルスペースとする領域Bを回避範囲とし, 相手集団の人間が領域Bに侵入してきた場合には,必要に応じて回避行動をとるよう設 定する.また,領域Aを緊急回避範囲とし,相手集団あるいは同一集団内の人間 が領域Aに侵入しようとしたとき,あるいは自分自身が他の人間の領域Aに侵入し てしまったときは必要に応じて緊急回避行動をとるよう設定する.

以後,便宜上,本論では領域Bをパーソナルスペース,領域Aを緊急回避エリアと 呼ぶ.



Hiroyuki Furukawa
2000-04-08