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研究者総覧「情報知」

メディア科学専攻

氏 名
村瀬 洋(むらせ ひろし)
講座等
音声映像科学講座
職 名
教授
学 位
工学博士
研究分野
画像認識 / 車載映像認識 / 放送映像認識
村瀬 洋

研究内容

映像・画像の認識により視覚機能を増強
■研究の概要■
実環境中の映像・画像情報を認識・検索・理解するためのアルゴリズム、およびそのアルゴリズムを用いて人間の視覚機能を増強・支援する技術を研究している。例えば、長期間にわたる膨大な放送映像データの中から特定の映像がどこにあるかを素早く検索する、カメラ付き携帯電話や小型カメラで撮影した低品質画像を精度良く認識する、長時間の映像を監視しながら特定のイベントの発生を調べる、車載カメラなどで撮影された車外映像から特定の状況を認識しドライバーを支援するシステムなどを開発している。これらの映像を中心としたマルチメディア情報に関して、パターン認識、コンピュータビジョン、画像処理の基本原理から応用までを幅広く研究している。
■研究テーマ■
(1) 低解像度画像認識
カメラ付き携帯、デジカメなどで撮影された低解像度・低品質の画像をロバストに認識する手法を開発している。これらの技術が実現できれば手軽に掲示板や雑誌の文字情報などを計算機に入力することができる。我々は、1枚の画像だけでは認識できないような低品質な画像に対して、複数フレームの動画像情報や、多視点画像の情報を組み合わせることにより高精度な認識系を実現している。また、カメラの特性や、手持ちで発生するブレ、ピントのぼけなどの画像の劣化要因をモデル化し実際に見られるであろう画像を生成しながら認識装置を学習する生成型学習や、複数の認識器を選択的に組み合わせてより高い認識器を実現する認識手法なども研究している。
(2) 車載カメラ映像認識
車載カメラを用いて自動車の周囲の映像を認識し、運転を支援する研究や、次世代カーナビ実現のための市街地の映像データベース構築の研究を行っている。運転支援技術としては、低品質な画像から道路標識等を高精度に認識することを狙い、部分空間法の高度化を行っている。また周囲の天候をドライバーの視点で認識しワイパーなどを自動的に動かすことを狙い、フロントガラス上の雨滴を検出するアイゲンドロップと名付けた雨滴検出手法を開発している。一方、市街地の映像データベース構築の研究としては、車載の全方位カメラで撮影した映像とGPSで計測した位置座標を対応づける手法を開発している。DPマッチングを導入した映像対応付け手法により、GPSの計測誤差や、自動車の走行速度の揺らぎを吸収することが可能となった。更に、この対応付けにより、新しく建設された建物を検出することができ、市街地の地図を自動的に更新することなども可能となる。
(3) 放送映像認識
近年、HDレコーダーを初めとする蓄積装置の大容量化に伴い長時間の膨大な放送映像を容易に蓄積することが可能となっている。このような長時間の映像の中から特定の映像を素早く探し出す映像認識に関する研究を行っている。特に、ニュースなどで何度も放映されるような重要な映像クリップやコマーシャル映像などの「繰り返し映像」を、高速に検出する問題に取り組んでいる。一般に、このような繰り返し映像を検出するためには映像全体の長さの2乗のオーダーの計算時間がかかり、映像が長くなると膨大な計算時間がかかる。そこでここでは、統計的な手法を用いて映像の高次元な特徴を低次元な特徴に変換し、この低次元な特徴を用いて候補を検出した後に、改めて高次元の特徴を利用して正確な映像を検出する手法を提案した。これにより、検出の計算時間は近似的に映像の長さの1乗のオーダーとなり、高速に繰り返し映像を検出することが可能になった。
■今後の展開■
上記で述べたように、車載カメラ映像、放送映像への応用を視野に入れつつ研究を展開させる。これまで開発した映像認識技術に加え、更に高度な認識アルゴリズムを開発することにより、人間の視覚機能を増強・支援する技術を研究していく予定である。
車載カメラ映像の認識

車載カメラ映像の認識

経歴

  • 1980年名古屋大学大学院工学研究科電気系専攻修士課程修了。工学博士。同年日本電信電話公社(現在NTT)入社。
  • 1992年から1年間、米国コロンビア大学客員研究員。2000年NTTコミュニケーション科学基礎研究所メディア情報研究部長。
  • 2003年名古屋大学大学院情報科学研究科教授。現在に至る。

所属学会

  • 電子情報通信学会
  • 情報処理学会
  • IEEE

主要論文・著書

  1. A Quick Search Method for Audio and Video Signals Based on Histogram Pruning, IEEE Trans. on Multimedia, Vol. 5, No. 3, 348-357 (2003).
  2. 局所色情報を用いた高速物体探索"アクティブ探索法",電子情報通信学会論文誌,Vol. J81-DII, 9, 2035-2042 (1998).
  3. Visual Learning and Recognition of 3-D Objects from Appearance, International Journal of Computer Vision, Vol. 14, 5-24 (1995).