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研究者総覧「情報知」

複雑系科学専攻

氏 名
北 栄輔(英輔)(きた えいすけ)
講座等
創発システム論講座
職 名
教授
学 位
博士(工学)
研究分野
計算科学 / マルチエージェント / 金融・経済 / ベイジアンネットワーク

研究内容

コンピュータシミュレーションが拓く豊かな社会
これまでの研究経過
境界要素法に関する研究
として、1)境界要素法による逐次形状最適化問題の解法、2)境界要素法によるコイルバネ断面形状の最適設計、3)境界要素法におけるアダプティブメッシュ法の研究等を行いました。また、境界要素法や有限要素法に関する工学系の初学者向けテキスト「偏微分方程式の数値解法」と、関連する線形代数に関するテキスト「計算のための線形代数」を著述しました。
Trefftz法は境界型解析法ですが、特異性のない積分方程式を用いる点が異なります。そこで、Trefftz法の工学的応用について研究を進め、1)Trefftz法による感度解析法の提案、2)Trefftz法による高次設計感度解析法の提案、3)Trefftz法に対するアダプティブメッシュ法の提案、4)Trefftz法による水面波スロッシング現象のシミュレーション、5)Trefftz法による傾斜機能材料の熱伝導解析等の研究を行いました。国際雑誌においてTrefftz法生誕70周年記念特集号が編集されたときにゲストエディタをつとめました。また、「Trefftz法入門」を著述しました。
博士論文で構造物最適化について研究を行ったことから進化的計算手法を構造最適化問題に適用することに興味を持ち、1)遺伝的アルゴリズムと境界要素法を用いた構造物最適化、2)セル・オートマトン法を用いた構造物設計法等の研究を行いました。
セル・オートマトン法の研究を一層進めた結果、これを交通シミュレーションに適用し、1)確率速度モデルの提案、2)自動車専用道路の交通シミュレーション、3)都市交通シミュレーション、4)道路合流部での渋滞緩和シミュレーション、5)ETC等料金所の設計等の研究を行いました。
実際の株式市場取引では、効率的市場仮説に従わない事象がしばしば発生します。そこで、この現象を解明するために、市場参加者の認知心理学的判断を考慮した行動ファイナンス理論が提案されています。そこで、1)プロスペクト理論に従うエージェントによる人工市場の設計、2)市場参加者のフレーミング効果の影響、3)自信過剰な投資家行動の市場への影響、4)損切り行動の市場への影響等の研究を行いました。
最近、ベイジアンネットワークの応用研究を始めました。具体的には、Webサービスへの応用、特にレコメンデーションシステムの開発について研究しています。また、ベイジアンネットワークを株式市場のおトレンド判断や株価予測にも適用しています。
今後の研究計画
交通シミュレーションに関する研究 交通シミュレーションを利用し、交通渋滞緩和を目的とした車両制御アルゴリズムの設計、人と車の統一的な交通シミュレータの開発等を経て、交通に対する認知科学的影響の評価と、それを用いた交通事故の数理モデルの構築を行いたいと考えています。
経済モデル・シミュレーションに関する研究 行動ファイナンス理論で考慮される認知心理学的効果はいくつかあります。今後は他の認知的バイアス(係留バイアス、代表性ヒューリスティックなど)のモデル化と影響などについて研究したいと考えています。
Trefftz法に基づくElement-Free法の提案 Trefftz法の定式化の改良を通して、基づく新たなElement-Free法を提案できると期待しています。
ベイジアンネットワークの応用研究 Webサーベスへの応用研究を通して、新たなビジネスモデルの提案をしたいと思います。また、株価予測、市場のトレンド分析を通して、景気好転につながる方策を見つけたいと思います。
セル・オートマトン法による構造物設計と並列計算機利用 セル・オートマトン法は並列計算機向きのアルゴリズムです。そこで、セル・オートマトン法に基づく最適化法を改良して、より並列計算機向きの最適化アルゴリズムとし、それを並列計算機環境において実行したいと考えています。
本郷交差点付近の交通シミュレーションと3Dグラフィック

本郷交差点付近の交通シミュレーションと3Dグラフィック

経歴

  • 1991年 名古屋大学工学研究科博士課程(後期課程)修了
  • 1991年 名古屋大学工学部助手に採用される。
  • 1994年 名古屋大学工学研究科講師に採用される。
  • 1999年 名古屋大学情報文化学部助教授に採用される。
  • 2004年 名古屋大学情報科学研究科助教授に配置換となる。
  • 2009年 名古屋大学情報科学研究科教授に採用される。

所属学会

  • The Institute of Electrical and Electronics Engineers
  • 情報処理学会
  • 日本機械学会
  • 応用数理学会
  • 日本計算工学会
  • 日本知能情報ファジィ学会
  • 電子情報通信学会
  • International Society of Boundary Elements (ISBE)
  • 人工知能学会
  • International Society for Structural and Multidisciplinary Optimization

主要論文・著書

  1. エクセルで学ぶセルオートマトン
  2. Utility Analysis of Zipper-Merging for Improvement of Traffic Jam by CA Simulation, Journal of Technical Physics, Vol.L, No.4, 387-402, 2011.
  3. Effect of Overconfident Investor Behavior to Stock Market, Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics, Vol. 14 No.6, pp.661-668, 2010.07.15.
  4. Application of Advanced Grammatical Evolution to Function Prediction Problem, Advances in Engineering Software, Vol.41, pp.1287-1294, 20010.10.08.
  5. Investigation of Self-Organizing Map for Genetic Algorithm, Advances in Engineering Software, Vo.41, No.2, 148-153, 2010.02.
  6. Influence of Investors’ Loss-Cut Behavior to Artificial Market, Evolutionary and Institutional Economics Review, Vol.7, No.1, 133-153, 2010.12.
  7. ベイジアンネットワークを用いた株価予測について, 情報処理学会論文誌トランザクション 数理モデル化と応用, Vol.3, No.3, 80-90, 2010.10.
  8. 多追従モデルを用いた道路合流部における渋滞の緩和, 日本機械学会論文集, 075巻, 758号, C編, pp. 695-2702, 2009.9.
  9. 魚価格変動のリスクヘッジを目的としたスワップ取引の設計, 情報処理学会論文誌 数理モデル化と応用, Vol.2, No.3, pp.138-145 , 2009.12.
  10. セル・オートマトンによる自動車専用道路の交通シミュレーション, 情報処理学会論文誌,Vol.46, No.SIG10(TOM12), 30-40, 2005
  11. 構造工学ハンドブック,共立出版,2004.