3.流れを再現する (1)

渦法による流れのシミュレーション


3.1 平行平板間乱流のDNS



壁乱流の代表例である平行平板間乱流を対象とした直接数値シミュレーション(DNS)を実施しました. 壁面摩擦速度と流路半幅に基づくReynolds数は180です.

解析領域の1/8に相当する壁面に接する領域の流動を図1-1,その瞬間画像を図1-2に示します. 主流方向の速度変動の正負の等値面が青色と黄色で示してありますが,それらがスパン方向に交互に現れるストリーク構造が解像されています. 速度勾配テンソルの第二不変量の等値面も灰色で示してありますが,主流方向に軸をもつ縦渦構造が明瞭に可視化されています. 渦法による平行平板間乱流のDNSの成功例です.

図1-1 平行平板間乱流における壁面近傍のストリーク構造と縦渦構造(動画)



図1-2 平行平板間乱流における壁面近傍のストリーク構造と縦渦構造(静止画)



3.2 回転する平行平板間乱流のDNS



大気の流れの予測やターボ機械内の流動の把握などに関連して,回転場における非圧縮性流れのシミュレーションが多数報告されています. 上述の渦法を用いて,スパン軸周りに回転する平行平板間の乱流を対象としたDNSを実施しました. 壁面摩擦速度と流路半幅に基づくReynolds数は171,無次元回転数は2.1です.

解析領域の1/8に相当する壁面に接する領域の流動を図2-1,その瞬間画像を図2-2に示します. 主流方向の速度変動の正負の等値面が青色と黄色で示してありますが,回転に対して前面(圧力側壁面)において,それらがスパン方向に交互に現れるストリーク構造が解像されています. 速度勾配テンソルの第二不変量の等値面も灰色で示してありますが,主流方向に軸をもつ縦渦構造も明瞭に可視化されています. ただし,回転に対して後面(負圧側壁面)では,このような組織的構造が著しく減少しています.Reynoldsせん断応力の低下によるものです. 回転場におかれた平行平板間乱流のDNSにも渦法が適用可能であることを示した研究です.

図2-1 回転場におかれた平行平板間乱流の組織的構造(動画)



図2-2 回転場におかれた平行平板間乱流の組織的構造(静止画)



3.3 スリット噴流のDNS



噴流(ジェット)は,様々な工業機器において観察される基本的な流れのひとつです. 長方形断面をもつノズルから噴出する噴流を対象として,渦法によるDNSを実行しました. 短辺と長辺の長さの比は1:15であり,短辺長さに基づくReynolds数は6700です.

噴流の速度分布の動画を図3-1と図3-2に示します. ただし,図3-1は短辺に平行な中央断面,図3-2は長辺に平行な中央断面の結果です. 様々なサイズの渦から構成される噴流の発達過程が捉えれらています.

時間的に十分に発達したときの平均速度分布の静止画を図3-3に示します. 短辺に平行な中央断面では,ノズル近傍でポテンシャルコアが存在しますが,その消滅後の領域で噴流幅が増しており,横方向への運動量の拡散が求められています. 一方,長辺に平行な中央断面では,ノズルから一定距離の下流では,下流ほど噴流の幅がやや狭くなります. これらの噴流の挙動は実験結果と一致するものであり,渦法による噴流のDNSの妥当性を確認できました.

図3-1 長方形噴流の短辺に平行な中央断面における速度分布(動画)



図3-2 長方形噴流の長辺に平行な中央断面における速度分布(動画)



図3-3 DNSで捉えられた長方形噴流の発達時の速度分布(静止画)



3.4 化学反応を伴う混合層



化学反応を伴う混合層のシミュレーションに渦法を適用しました. 速度が異なる化学種Aと化学種Bが混合して生成物Pが創出される不可逆一段反応を伴う混合層です. その化学式は,化学量論比sを用いて,A+sB→(s+1)Pとなります. たとえば燃焼問題では,化学種Aは酸化剤,化学種Bは燃料に相当します.

化学種A,化学種Bおよび生成物Pの濃度分布の時間変化の動画をそれぞれ図4-1,図4-2および図4-3に示します. 静止画を図4-4に示します. ただし,速度比が0.4,Damkoehler数が1,化学量論比sが1の場合の結果です. 化学種Aと化学種Bの境界で大規模な渦が発生し,そこで生成物Pが生じる過程が捉えられ,実験結果などと一致することが確認されています. 渦法は,化学反応を伴う流れのシミュレーションにも有用であることが判ります.

図4-1 化学種Aの濃度分布(動画)



図4-2 化学種Bの濃度分布(動画)



図4-3 生成物Pの濃度分布(動画)



図4-4 不可逆一段反応を伴う混合層の濃度分布(静止画)



3.5 円筒タンク内の密度成層流体に対する噴流による混合



円筒タンクの上層に水,下層に塩化ナトリウム水溶液を貯め,タンク底面のノズルから下層の流体を噴射した際に生じる混合現象を渦法でシミュレーションしました. 解析領域を図5-1に示します. タンク底面(水平面)からのノズルの角度は60度,塩化ナトリウム水溶液の濃度は2パーセントとし,流れと混合に及ぼす噴流のReynolds数Reの影響を調べました.

ノズルを含む鉛直中央断面の濃度変化の動画を図5-2,図5-3,図5-4に示します. Re=475の場合には,図5-2のように,噴流は密度界面を貫通せず,活発な混合は生じません. Re=1426の場合には,図5-3のように,密度界面を貫通した噴流が下降して界面に沿って流れ,上昇で混合が生じています. Re=2614では,図5-4のように噴流が上部境界に達し,全体で活発な混合が発生しています.

上述のシミュレーション結果と可視化実験結果を比較すると図5-5のようになります. Reに応じた噴流の挙動や混合の様子が的確にシミュレーションで捉えられています.

図5-1 円筒タンク内の密度成層流体とノズル



図5-2 Re=475の場合の鉛直中央断面内の濃度分布の変化(動画)



図5-3 Re=1426の場合の鉛直中央断面内の濃度分布の変化(動画)



図5-4 Re=2614の場合の鉛直中央断面内の濃度分布の変化(動画)



図5-5 噴流による円筒タンク内の密度成層流体の混合(静止画)



3.6 気泡プルーム



水中に気泡吹き込むと浮力により上昇する気泡の周囲に水流が誘起されます. このような気泡プルームのシミュレーションに渦法を適用しました.

水を貯めたタンクの底部から気泡を吹き込んだ際に生じる気泡プルームをシミュレーションしました. 気泡の直径が0.4 mm,吹き込みノズル直上の気泡体積率が0.02の時の気泡の運動の動画を図6-1,分解した静止画を図6-2に示します. 上昇する気泡が周囲に水流を誘起し,それに起因して気泡が水平方向に大きく分散していきます. 実験結果と一致することが確認されており,気液二相流に対する渦法の有用性が示されています.

図6-1 タンク底面から放出された気泡群が生起する気泡プルーム(動画)



図6-2 タンク底面から放出された気泡群が生起する気泡プルーム(静止画)