5.流れを理解する

固体球を水面に向けて鉛直上方へ打ち上げる実験



我々の研究室では,固体球を水中から水面に向けて鉛直上方に打ち上げる実験を行っています. 球体が水面が通過する際に,水面は非線形現象を伴うため複雑な挙動を示します. 水面と球体の相互干渉を物理的に解き明かすことで,船舶の抵抗低減や海面をジャンプする生物の飛翔メカニズムの解明に貢献することが期待されます.

5.1 固体球の発射装置



図5-1に実験装置の概要を示します.

図5-1 球体の打ち上げ装置の概要



実験装置は透明なアクリルタンク(幅0.4×奥行0.4×高さ0.4 m)とタンクを支える架台で構成されます. タンクには水が貯められ,その底部中央に球体の発射台が設置されます. 実験装置は合計8個の調整足によって支えられており,それぞれの足の高さを調節することで水槽は水平に保たれます. 水槽の下側には球体の発射台,コイルバネ,引き金などからなる球体の発射装置が配置されます.図5-2に発射装置の断面構造を示します.

図5-2 発射装置のの概要



図5-2の右図は球体が発射台に設置されている時の様子です. 発射台の中心部にはシリンダ(長さ67 mm,内径19.3 mm)があり,シリンダ上端には球体が配置されます. シリンダ内部には,円形断面をもつ鉄棒(長さ170 mm,直径19.1 mm)が挿入されており,その下端はコイルバネと直列に接続されています. 鉄棒先端には高さ4mm,幅6mmの上面が平らな微小タブが取り付けられています. 球体が発射台に設置されて待機状態の時,微小円柱と球体底部の距離は16.6 mmです. 鉄棒を鉛直下方に押し下げてコイルバネを圧縮し,引金で鉄棒を固定します. 引金を左方向に引いてコイルバネを開放すると,図5-2の左図のように鉄棒がシリンダ内を上方に運動し,その上端が球体を打撃して球体が水中上方に放出されます.

5.2 固体球の打ち上げの様子



水中から水面に向けて球体を打ち上げたときの様子をアニメーション1に示します.

アニメーション1 水面へ向けて打ち上げられた固体球と水面の様子



水中から垂直上方に打ち上げられた球体が水面に到達した時に,水面には上に凸のふくらみが形成されます. その後,気液界面を通過した球体は水塊を連行しながら上昇を続け,水塊はシート状を成して水平方向へ広がっていきます. 球体が最大到達地点に達した時に,球体の下方には明確な水柱が形成されます. 空中を運動する球の周りには常に水塊や水柱が接触しており,球体の運動に影響を与え続けます. 我々の研究室では,このような水塊や水柱が球体の運動に与える影響について調査しています. 球体と水面の干渉メカニズムを明らかにすることで,水面と物体の干渉に伴う抵抗係数や移動係数などのパラメータの決定に貢献します.

[本研究に関係する文献]

[1] K. Takamure and T. Uchiyama,
Air–water interface dynamics and energy transition in air of a sphere passed vertically upward through the interface,
Experimental Thermal and Fluid Science, Vol.118, 110167 (2020).


[2] K. Takamure and T. Uchiyama,
Energy transition in air of a sphere launched vertically upward in water,
Ocean Engineering, Vol.207, 107426 (2020).


[3] K. Takamure and T. Uchiyama,
Dynamics of a sphere launched vertically in water,
Powder Technology, Vol.372, pp.246-257 (2020).